【取材】テディーベアカットの生みの親。トリミングサロン「DogMan」が強く支持される理由と魅力
街で遭遇したら「なんの犬種ですか?」と必ず声をかけられる。そんなトイプードルたちの個性的なカットを手がけるトリミングサロン「DogMan」。
私たちトイプードルライフのキャッチコピーでもある「かわいいの、その先へ」。DogManに通う犬たちを見てシンパシーを感じ、詳しくお話しをうかがいたいと思ったのです。
今ではすっかり有名な、テディベアカットの生みの親でもあるDogMan。広報担当の宗像ミオさんとトリマーの皆さんに、サロンの始まりからカットのことまで、じっくり語っていただきました。
「テディベアカット」の誕生。DogManのはじまり
ーーさっそくですが、「DogMan」を立ち上げた経緯をお聞かせください
宗像:
DogManは、1997年に東京都世田谷区からスタートしました。
もともとアパレル業界に勤めていた代表の江頭重知が、もっと愛犬と一緒に過ごせる仕事に就きたいと、トリミング専門学校に通いだしたのが「はじまりの一歩」です。
そのとき江頭は、当時は珍しかったレッドカラーのトイプードル・NATTYと出会い、オリジナルカットを施していました。
そのカットは彼がコレクションしていたアンティークテディベアをイメージし、NATTYのスイートな性格とぬいぐるみのような赤い巻き毛、6kgというサイズ感を生かした、まさにNATTYオリジナル。
その姿で駒沢公園をお散歩していたら、当時の犬仲間のあいだで話題になったそうです。
その頃のプードルたちは、ほとんどがホワイトかブラックカラー。顔をバリカンで剃り、脚に丸いポンポンをつけているクラッシックな、いわゆる「プードルカット」がスタンダードでした。
一方、全身の毛を生かして作るNATTYのカットスタイルは当時にしては珍しく、「すごく可愛いプードルがいる」と大変驚かれたそうです。
「うちの子もNATTYみたいなカットをしてほしい」というリクエストも多かったようで、江頭は学校に通いながら知り合いの犬たちをカットしていました。
その経験を通して「犬たちはトリミングでもっと可愛くなる!」と確信し、それ実現するべく、専門学校卒業後まもなくDogManを立ち上げました。
ーーまさに、愛犬のNATTYといっしょにスタートさせたんですね
宗像:
そうですね、今のDogManがあるのは江頭の当時の愛犬であり初代看板犬・NATTYのおかげだと思います。
今でこそトイプードルの「テディベアカット」は定番になりましたが、そのカットはNATTYに似合うスタイルとして作られたものだったので、当初はお客様から「NATTYカット」と呼ばれていました。
SNSがない時代ですから、リアルな口コミで時間をかけて広まっていき、NATTYがファッション誌のモデルとしてお声がかかるようになるなど、徐々にそのスタイルやトイプードルという存在に注目が集まっていきました。
そしてメディアから「テディベアカット」と名付けられ、プードル人気が急加速したのが2000年頃からだったと思います。
今でもモデルになったテディベアのチーキーは、店内に飾っているんですよ。
ーー「テディベアカット」の生みの親…! トイプードル界の神様のような存在ですね。
宗像:
(笑)。DogManも最初は6坪という、とても小さなサロンでした。
トリミングルームをガラス張りにしてカット風景をあえて見ていただくスタイルや、看板犬たちも交えてトリマーとお客様とのコミュニケーションを楽しみながらカットをご提案するスタイルは、今でも変わっていません。
昨年でオープンから25年周年を迎えた「DogMan」(本店)と「DogMan AOYAMA」(青山店)の2店舗を運営していますが、現在は同じ想いを引き継いだトリマーたちが、トリミングを日々進化させています。
犬の先には、必ず人がいる。25年間ぶれない思い
ーーそんなDogManのコンセプトは、ずばりなんでしょうか
宗像:
サロン名の由来でもありますが、「犬の先には必ず人がいる。トリミングを通して犬(Dog)と人(Man)を幸せにしたい」という想いがオープン当初からのコンセプトです。
飼い主様の想像する以上に犬たちの魅力をトリミングで引き出し、生きものとしてのナチュラルな美しさ、可愛らしさの中にもインパクトのあるスタイルで、1頭1頭の「個性=キャラクター」を表現するのがDogManのカットです。
ーー「DogManカット」の子は似ているようで、実は1頭1頭絶妙に異なるところがすごいなぁ…と思います
トリマー中西:
同じトイプードルでも骨格や毛質はもちろん、毛の流れや厚み、そして性格や動きも異なります。
犬たちの個性を第一に考え、さらには飼い主様の雰囲気やライフスタイル、センスといった要素も意識させていただくので、より1頭1頭の個性が際立つのかもしれません。
加えて、「こんなに素敵な飼い主様には、こんな子を連れていてほしい」という私たちの願いも添えさせていただいてます。
このすべてが組み合わさって、その子のためのオリジナルスタイルが完成する…というわけなんです。
ーーそこまで計算し尽くされているとは…。絶妙にカットが異なることにも納得がいきます。
トリマー中西:
そのように言っていただけて、とても嬉しいです!
その子らしさや飼い主様らしさを理解するためには、コミュニケーションがとても大切になります。
1頭1頭のカットすべてに理由があって、ここに辿り着くまでのご家族とトリマーたちとのストーリーもまた、個性として表われているかもしれません。
犬と飼い主様を理解して信頼関係を築き、カットも微調整を重ねていきますから、理想のスタイルを実現するまでには数ヶ月かかることもあります。
ですが、その子のためのカットが完成したときのお客様の笑顔は何にも代えがたいものがあって、私たちの原動力になっています。
飼い主からうけるインスピレーション
ーーDogManに通われる飼い主様も個性的な方が多い印象ですが、実際はいかがでしょうか
トリマー坂井:
DogManのスタイルを好んでくださる方は、トイプードルの可愛さだけでなく、洗練された個性やシンプルなかっこよさ、美しさを求めている方は多いかもしれません。
お客様はファミリー層から、自営業、ファッション、マスコミ、音楽、美容、飲食、カメラマンなどご職業は幅広いですね。
飼い主様のご職業や服装などの雰囲気からカットのインスピレーションを受けることも多いのですが、やはりファッショナブルで個性的な方が多いと思います。
著名な方も含め様々なお客様がいらっしゃいますが、犬を通してお会いすることで、とてもフラットなスタンスで温かく接してくださいます。
そうした何気ない会話から得たヒントも、カットに反映させていただくことがあるんですよ。
DogManは犬たちだけでなく、飼い主様にも恵まれているなぁ…と日々感謝しています。
ーーカットの様子を拝見していると、おとなしくしている子がほとんどで驚きました。なにか秘訣はあるのでしょうか
トリマー森谷:
ほとんどのお客様が子犬の頃から定期的にご来店くださるので、毎月「その子」に会えるというのは大きな理由かもしれません。
トイプードルの場合は4時間という長めのお時間をいただいていますので、グルーミングからカットまで、各担当のトリマーがじっくりコミュニケーションをとることができます。
犬の性格や成長に合わせて丁寧に対応できますので、自然と信頼関係が生まれ、犬たちの安心感へ繋がっているのだと思います。
10年以上通ってくださる方も多く、私たちトリマーも1頭1頭をよく理解しています。
テーブルの上でうとうとする子もいますし、初めてご来店された方はみなさん驚かれますね(笑)。
ーー現在は2店舗とも、新規のお客様を受けつけていらっしゃらないんですよね
トリマー坂井:
そうなんです…。やはりトイプードルなどのトリミング犬種は2〜5週間ごとの頻度でご来店いただき、長いお付き合いになるお客様がほとんどです。
今は常連様で毎月のご予約が埋まってしまい、新規様の枠をご用意できない状況が続いております。
私たちもとても心苦しい点ではありますが、お客様に高齢犬も増えていますし、効率を上げることよりも、DogManを信頼して大切な愛犬を預けてくださっている常連様と真摯に向き合うことを優先させていただいております。
潜在的な魅力を引き出す大切さを教えてくれたのはー
ーーさいごに、ここまでコンセプト(想い)を体現できている秘訣を教えてください
トリマー中西:
私たちトリマーがカットを作る上でベースになっているのが、初代看板犬・NATTYと、2代目のミニチュアプードル・SAOPAULOの2頭なんです。
「かわいい」の先に、その子の性格やキャラクターが丸ごと表現されたインパクトと自然なフォルム。これらがトリミングで作り込まれている衝撃。
彼らの存在が、自分を含めた周りの人々の笑顔につながり、犬を通して幸せな関係性が築かれることに感動を覚えました。
これはDogManのコンセプトそのもので、今では「自分たちの手」を通し、多くの犬たちのカットを作る原点になっています。
ーーNATTYとSAOPAULOの存在は、私たちが想像する以上に大きなものだと感じます
トリマー中西:
DogManにいるすべてのトリマーたちが、彼らに衝撃を受けましたからね(笑)。
トリミングには様々な「かわいさ」や「上手さ」があると思いますが、DogManの場合は、アンティークテディベアから受けた発想と、代表・江頭による男性目線のニュートラルな感覚がベースになっています。
「かわいくし過ぎない・きれいに切り過ぎない」という考えが、従来のトリミングのイメージを覆し、DogMan独自の意識が生まれたのかもしれません。
どの犬にも存在する自然的な美しさを、トリミングという人の手を加えることで、犬たちの潜在的な魅力を引き出すこと。まるで、その子が最初からその形で生まれてきたかのようなナチュラルさを表現すること。
理想のスタイルになった愛犬を見てご家族様に喜んでいただきたいというのは、私たちトリマーに共通する思いです。
NATTYとSAOPAULOがベースになり、多くの犬たちが教えてくれた「トリミングの可能性」を信じ、DogManスタイルをさらに進化させていきたいです。
そしてこれからも、犬と人への想いを大切に、チームDogManとしてご家庭に笑顔と幸せをお届けしていきたいと思います。
◆DogMan
1997年に江頭重知さん(代表)がスタートしたトリミングサロン。2023年5月現在は 「DogMan」「DogMan AOYAMA」の2店舗を運営。
想いと経験を深めたトリマーたちが、飼い主・犬たちとコミュニケーションを重ね、オールシザーで1頭1頭丁寧に作り出すスタイルは多くの支持を得ている。
※現在は両店において、新規のお客様のご予約を受け付けていません
Photo:Hiroaki Otake
Text:Chika(editor-in-chief)
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